遂にこのときが来た。
フェズから夜行バスで一晩かけて、
ボクはメルズーガという砂漠の街に向かった。
避けられなかった!サハラ砂漠に潜む危険
長距離移動の車内ではヌクヌクしたいから、ボクは靴を脱いで過ごすことが多いのですが。
靴下の姿でいたら運転手に叱りを受けた。
意味が分からなかったので、適当にうなずいて再度靴を脱いでいたら、
「何度言わせる?俺のバスでは靴を脱いじゃダメだ!」
軽くキレられる。。
まぁ下品といえばそうだけど、こんなに厳しいのはなぜだろう?
途中何度もトイレ休憩を挟むのだが、これが凄く混雑する。
なぜなら、モロッコの人たちは手だけでなく足も洗うからだ。
宗教について詳しくはないが、おそらくイスラム教では足も清めるべき対象になっているのだろう。
バス車内で素足になっちゃいけないのは、下品とかじゃなくて、無礼だからなのかもしれない。
知らないって怖い、つくづく思った瞬間だった。
砂漠の街「メルズーガ」で事故は起きた
ちょうどイイ時間だ!
外が明るくなり始めたとき、バスは「砂漠の街!メルズーガ」に到着しました。
気温も涼しくて気持ちいい。
メルズーガでバスから降りたのは、ボクと韓国人の女性の2人だけだった。
バスに韓国人が乗っていたのは知っていた。
なぜなら10数人の乗客の内、現地人がほとんど、ヨーロピアンの旅人が3名くらい。
アジア人はボクと彼女の2人だけだったから。
スッカラカンと静まり返った砂漠の街で、バスから降りてポツンと立つ2人、
数秒フリーズしたのち、
「どちらへ?」
声に出していないが、表情だけで読み取れる。
ボクは「オアシス」という日本人の間で有名な宿を予約していた。
彼女はというと…同じくオアシスだった。
バス停まではオアシスのスタッフさんが迎えに来てくれる手筈になっていて、数分もしないうちに来てくれた。
オアシスにチェックインすると、朝も早かったので朝食の用意をしてくれたのだが、
出てきた料理がカップル仕様だった。。。
そりゃこんな砂漠で、アジア人の男女2人が同じタイミングで同じ宿にチェックインしたんだから、そう思われてしょうがない。
しかしこれには爆笑してしまい、
そう尋ねると、
「私は大丈夫。」
ん?
深い意味はないだろうけど、その言葉を聞いてボクは息をするのが楽になった。
なんてことだ。
メルズーガ初日、気づけば1日中ボクは彼女と過ごしていた。
砂漠で出会った女性…ひとときの感情と頭では分かっていながらも、
朝と同じくカップル仕様で出された夕食も、拒否ることなく食べてしまう。
翌日はラクダにまたがって、砂漠の奥深くまで進みキャンプサイトで1泊するツアーに参加した。
天候は晴れ、望みだった
「星空のした砂漠のど真ん中で寝ころぶ」
これが遂に叶うときがきた。
タジン鍋を食べたり、ガイドさんのジャンベ生演奏を聞いたり、夜はあっという間に時間が過ぎていった。
演奏が終わると、
星を観に行ったり、横になって休んだり、各自自由行動が始まった。
ボクの思考はとっさに、、「あの子を誘わなくちゃ!」
そして行動に出ようとしたが、もたもたしていたせいで、モロッコ人のガイドさんに先を越されてしまった。
あの子(韓国人)とガイドは、手をつないで暗闇の砂漠に消えていく。
ボクは後を追いかけて、2人の間に割って入った。
自分でも自分のしていることが理解できなかった、おそらく頭では何も考えていなかったのだろう。
しばらく3人で他愛もない会話をした、ボクは粘って粘ってそこを離れなかった。
ガイドがあの子の右手を掴むなら、ボクは左手を握った。
そうやっていると、ガイドは
「じゃあまた明日!あんまり遠くに行かないようにね。」
と言い残し自分のテントへ戻っていった。
砂漠とは恐ろしい、
酒を飲んだ訳でもないのに、自分の中から湧き出る言動を一切隠すことが出来なくなっていた。
「I like you」
言ってしまった、
これまでの旅で、恋愛に発展しそうな場面は無いこともなかったが、ちゃんと理性があった。
国際恋愛は大変だし、現実的じゃない。
しかし砂漠では、性(さが)を抑えることが出来なかった。
「あの子」は翌日の早朝に誰よりも早く出発する、もう顔を合わすことはないのに、気持ちを伝えてしまった。
たった2日間の出来事なのに、時間感覚は2日間ではなかった。
「サハラ砂漠」こそボクが求めていた所であり、本来の目的は砂漠で寝っ転がるというシンプルなものだったのに。
「あの子」が現れたおかげで、
サハラに来ていながら、ボクの目には全く別の世界が写ってしまった。